私はこの大銀杏がとても好きです。時折、鶴岡八幡宮へお参りに行きますが、この樹のそばを通るたび、シャッターを切らずにはおれません。言い伝えでは、樹齢千年。ゴツゴツとしてこぶだらけ。思わず圧倒されるような、威厳のある神聖なお姿。カメラアングルにおさまらないほど見事な巨木ですが、そばに佇んでいると、心の中に何か静かな感動が広がります。いちばん鎌倉らしいものって何だろう?と考えた時、いちばんに浮かぶのも、鎌倉の真ん中にそびえ立つこの樹です。気になる理由は、実はもうひとつあります。それは、『小桜姫物語(浅野和三郎著)』です。多慶子夫人の守護霊小桜姫による著名な霊界通信ですが、この大銀杏の精と小桜姫の邂逅の場面が忘れられません。「長きに渡り、静かに歴史と人々を見つめてきた」というのはただの慣用句ではないことを確信させます。鎌倉を裏で牽引しているのは、実は大銀杏さんじゃないかと、ひそかに思っております。
(リラ自然音楽研究所から、徒歩約25分)
2009年4月号掲載
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大銀杏は、2010年3月10日の明け方に突然倒伏して各方面に衝撃を与えました。現在は残された根元や移植した幹から伸びるひこばえを保護しながら、再生の試みが続いています。