よく、家とか場所に呼ばれたという話を聞きますが、実は初めてそんな経験をしました。私を呼んだのは、この由比ヶ浜海岸です。休みのたびに北鎌倉に通うようになって10年。講座やボランティア活動の合間をぬっては、この浜に降りるようになりました(それまでは、人が多いので近づかないようにしていたくらいなのですが)。そこで歌や朗読の練習をしたり、日没を見たりしているうちに思い出してしまったのです。小さな弓のような形の浜が私の心の中にもあって、どうもそれが「理想の原風景」のようだということを。そちらは、高く切立った崖だらけの原初の海岸ですが、確かに由比ヶ浜なのです。その浜が、目をつぶるたびに激しく私を呼び、ついには引っ越しを決めました。
鎌倉時代は、血なまぐさい合戦場、処刑地や墓地であったという一方(静御前の悲劇の言い伝えもありますね)、頼朝公の禊の場でもあったとも聞きます。漁業はもちろん、交易の中心舞台でもありました。じつに多様な歴史を持つ由比ヶ浜ですが、リラ研の引っ越しのおかげで、今では私たちの大切な庭となりました。何か深い縁を感じます。ワカメやビーチコーミングだけでなく、晴れた日には遠く大島も見えます。お弁当を広げるときは鳶さんにお気をつけください。