昔の鶴岡八幡宮といえば、参拝する前に渡る縁起物の赤い太鼓橋が印象的でした。遠足の時など、みな競って駆けあがり滑ったり転んだり大騒ぎしたものですが、いつの間にか立ち入り禁止になってしまいました。安全と保全のためでしょうか。その太鼓橋の下にあるのが瓢箪(ひょうたん)のかたちの源平池です。紅白蓮や牡丹園が有名ですが、実を申せば蓮も牡丹もあまり鑑賞したことがありませんでした。ところが今年は、何だかすごく蓮が立派に育って、素通りできない見事さを感じました。写真を撮った日は、少し盛りを過ぎていましたが、大きな葉や花がものすごい密度で重なり合って、その面(おもて)を折からの強風がふき渡って行く様はほんとうに壮観でした。
史実によれば、池の西側を平家に見立て紅蓮を植え、「死」を意味する四つの島を配置。東側を源氏に見立て白蓮を植え、「産」を意味する三つの島を築いて源氏の繁栄祈ったとか。ちょっと恐い歴史ですね。現在は東西とも白蓮が多く、源氏池の所々に紅蓮があります。ともあれ蓮がどこまでも続く風景は素晴らしく、じっと見ていると、くらくらと自分が小さく縮んで行くような気持ちなります。そこは亜熱帯の国のようでもあり、妖精の国のようでもありました。