鎌倉の背骨ともいえる若宮大路ですが、その真ん中にある「段葛」って不思議な仕掛けだなぁ、といつも思います。大きな狛犬を左右に見て、軽く会釈しながら鳥居をくぐれば、そこはまさに参道の中の参道というたたずまい。一歩一歩土を踏みしめて、新緑の桜を見上げながら進めば、「参道ってやっぱり、産道なのかな?お参りって、もしかして生まれ直すこと?」などと理屈抜きに思えてきて、八幡さまに到着する頃には、しんと静かな気持ちになっています。安産祈願のため頼朝公が築いたことで有名ですが、段葛自体が遠近法を使った軍事上のトリックだという話や、元々は一の鳥居まであった段葛が、横須賀線の開通時に取り壊されてしまった話(一の鳥居周辺にその形跡があります)などは、ちょっと複雑な心境になりますね。さて、二の鳥居にほど近い和菓子屋さんには、静御前と義経の睦まじさを象徴する霊石、女夫石にちなんだ銘菓「義経静女夫饅頭」があります(蒸したてのホカホカです)。初夏の風や輝く緑と一緒に、味わってみてはいかがでしょうか。そして段葛には、青木由有子さんが植樹した桜もあります。探しながら歩くのも楽しそうですね。
(リラ自然音楽研究所から、徒歩15分)
2009年6月号掲載