鎌倉と言えば、やっぱり江の電ですね。子どもの頃から、この小さくて古びた電車に乗るのがとても好きでした。今はだいぶ新しい車両に入れ替わりましたが、床が木張りでレトロな窓、ドアの横に変色した鏡があるような車両にあたると嬉しいです。昔は、車窓からの海を見たくて江の電に乗りに来ることもよくありました(今はいつでも乗れるのに、中々機会がないのです。10代の頃は時間がいっぱいあったのですね)。
江の電の楽しさは、道路や町並み、海や山に沿ってあっちに曲がりこっちに曲がりしながら、周りの環境や大自然とひとつになって走っていることだと感じます。今でこそ皆に親しまれる電車ですが、1902年の開業前には開発反対の声が上がり、その紆余曲折がこの曲がりくねった線路を生み出したようです。急なカーブを曲がるたびに電車はまるで生き物のように身体を揺らし、車輪はキーキー叫び、どこかのお宅のごはんのおかずが見えそうなほど軒先スレスレを走行します。さらに、鎌倉高校前駅から七里ヶ浜駅あたりの海は、由比ヶ浜とはまったく違った趣で、相模湾というよりむしろ太平洋を感じさせる絶景。空気の澄んだ日には、江ノ島と一緒に富士山が見えるかもしれません。
<乗車案内>
電車は12分間隔と覚えやすく、「1日乗車券のりおりくん」は 580円です(例えば、鎌倉〜和田塚190円+和田塚〜鎌倉高校前250円+鎌倉高校前〜藤沢250円と、3回以上乗るならトク)。平均時速25kmの、のんびり単線電車です。窓からの富士山スポットは、稲村ヶ崎駅と七里ヶ浜駅の間です。湘南海岸公園と鵠沼の間もほんの一瞬見えます。以降藤沢までは見えそうで見えません。
2010年12月号掲載