にぎやかな鎌倉の夏が終わり、ふたたび静かな海を楽しめる季節になりました。有名小説の真似をして、「…トンネルを抜けると”青い海”であった。」とでも言いたくなるような門構えのこの浜は、材木座海岸です。漁の道具とサーフボードが渾然一体となった材木座は、波音がとても穏やかで、波もまったりしている日が多く、お隣の由比ヶ浜とはまた違った独特の雰囲気があります(理由は分かりませんが、遠浅とか、和賀江島とか、陸の地形も関係あるのかも)。そして波が静かなぶん、日没時の色変化は筆舌に尽くしがたい美しさです。Joel Meyerowitzの静謐な海の写真を思い出します。耳を澄ませば、足元で波がちゃぷちゃぷ言って、砂に染み込みむ水の音まで聞こえますし、風も「サガレンと八月」のように何か言っています。身近な場所でありながら、内奥に遠い世界を宿しているのを感じられる場所です。
海岸橋を逗子方面に歩いて、突き当たりの九品寺T字路を右に曲がってさらに歩き、バス通りが弓なりに曲がっても構わず直進すれば、海に抜けるトンネルがあります。材木座バス停近くにはパン屋さん(金土日水のみ)もあるので、海で食べるのも一興かもしれません。くれぐれも鳶の動きにはお気をつけて。
(リラ自然音楽研究所から徒歩約15分)
2009年10月号掲載