子どもの頃、外国の童話で知った「やどりぎ」は、クリスマスの日にその枝の下でキスをすると永遠に結ばれる等という言い伝えがあって、一体どんな木なのだろうと想像をふくらませたものでした。大人になって再会したのは宮沢賢治の童話『水仙月の四日』の中。「手にもってゐたやどりぎの枝を、ぷいつとこどもになげつけました。枝はまるで弾丸(たま)のやうにまつすぐに飛んで行って、たしかに子供の目の前に落ちました」というくだりに大変心を動かされ、いつの日か見てみたいなぁ、と思いを募らせていたのですが、灯台下暗し。なんと若宮大路にありました。欧州では古くから魔除けの木とされ、クリスマスには実のついた枝を飾り、アイルランドでは宗教儀式に使っているとか。太陽の力の弱まる冬の間に、緑の葉と金色の花を咲かせることから、豊穣を守る神性な木とされ、太陽信仰などの宗教的儀礼の意味をもっているとのことです。まん丸ですごく不思議な感じがして、ものすごくきれいです。ひとつきりではなく、色々な形のものが周りの木にも宿っており、四季折々違った表情を見せてくれます。鎌倉市体育館の駐車場の前で、並木を見上げてみてください。
(リラ自然音楽研究所から、徒歩4分)
2009年8月号掲載