暦が十月に変ってずいぶん経つというのに、訪ねた日の寿福寺には蜩(ひぐらし)が鳴いておりました。しかも樹木に覆われたやぐらを撮っていて蚊に食われ、痒いのを我慢しながらの探訪でした。いつまでも寒さが来ない秋、蚊だけでなく蝶も舞い、地震や豪雨が多くてとても心配です。
さて、今回訪ねた寿福寺は鎌倉五山の第三位に数えられるお寺です。「五山」は格式のある禅寺を保護統制するために定めたもので、京都五山に並びます。寿福寺は、頼朝の没した翌年の1200年、妻・政子が明庵(みょうあん)栄西(えいさい)を招いて開山しました。一帯は元々頼朝の父・義朝の館があった場所で源氏にとても縁の深い土地柄です。境内は非公開ですが、山門から見たお堂は源氏山を背負うようにして建てられ、裏手に笹がさらさら鳴る林や、やぐらがあり、奥には墓所もあるようでした。調べてみると、義朝や政子、高浜虚子の墓の他、鎌倉の風致保存に尽力した作家大佛次郎の墓もあるとのこと。あたりは人通りが少なく、華美な装飾はなく、禅寺らしい雰囲気に包まれています。外門と山門を結ぶ参道がとても静かで、苔むした植え込みと木々の美しさが印象的でした。季節が変ったらまた行ってみたいような気持ちになりました。
(リラ自然音楽研究所から徒歩約23分。鎌倉駅西口から約10分)
<道案内>
六地蔵から続く今小路を、御成小学校、紀ノ国屋スーパーを越えて、ひたすら直進した左側、八坂神社の隣です。道すがらの甘味屋で白玉を食べるのも一興かもしれません。
2010年11月号掲載